消すことの出来ない傷跡。ただ汚いばかりの現実。 私は一人、安心出来る居場所を探していただけだった。 行き交う雑踏と止まぬ喧騒に包まれたこの街。 溢れるノイズの中、たった一つ、純粋に最短距離で私に響いた君の声。 そう、彼と出逢うまでは。 停止した思考。ただ過ぎゆくばかりの毎日。 俺はただ、些細な下心から小さな刺激を求めただけだった。 行き交う情報と止まぬつぶやきに包まれたネット。 溢れ出た感情の先、ホテルの一室、両手を真っ赤に染めて立っていた彼女の姿。 そう、あいつと出逢うまでは。 この出逢いが偶然なのか必然なのかなんて分からなかった。 でもこれだけは分かる、二人とも互いにもっと分かりたかったんだ。 分かりたくて伝えたくて届けたくて。 汚くて酷くて後悔して。 嫌になって傷ついて失って。 それでもやめることが出来なかった。 二人の音が響きあうまでは。 これは、二人の男女の出逢いからはじまる、痛みと温もりの物語。